No.462 サンシティ名画劇場「土を喰らう十二ヵ月」

No.462 サンシティ名画劇場「土を喰らう十二ヵ月」

沢田研二、主演。料理研究家・土井善晴が映画に挑む。四季折々の食で綴る人生ドラマ。自然を慈しみ、人と触れ合い、おいしいご飯を作り、誰かと食べられることに感謝する日々を送る男の姿を通して、丁寧な生き方とはどういうものか、真の豊かさとは何かを問いかける。

日 時

2023年5月19日(金) ・ 20日(土)
 10:00/14:00/18:30

本編時間

1時間51分

会 場

小ホール

出 演

料 金

全席自由(税込)
一般1,000円
割引券持参800円

公式サイトURL https://tsuchiwokurau12.jp/

公益財団法人越谷市施設管理公社


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1960年代にデビューして以来、ミュージシャンとしても俳優としても、唯一無二のオーラを放ち続けている沢田研二。昨年は代役で出演した『キネマの神様』で話題を呼んだが、実はその以前から、一年半がかりの映画の撮影に取り組んでいた。それが『土を喰らう十二ヵ月』である。

 

北アルプスを望む信州を舞台に、犬一匹と山荘で暮らす作家の一年間を季節の移り変わりと共に追った本作は、沢田研二の今の魅力を封じ込めた待望の主演作である。

 

 

 

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原案は、『餓鬼海峡』などのベストセラーで知られる水上勉が、1978年に雑誌ミセスに連載した料理エッセイ。少年時代に京都の禅寺で精進料理を学んだ水上は、自ら収穫した野菜や山菜を駆使して料理を作り、それを食す喜びや料理にまつわる思い出を味わい深い文章に仕立て上げた。その世界観を元に、『ナヴィの恋』の中江裕司監督が脚本を執筆。自然を慈しみ、人と触れ合い、おいしいご飯を作り、誰かと食べることに感謝する日々を送る姿を通して、丁寧に生き方とはどういうものか、真の豊かさとは何かを問いかける。

 

 

 

 

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白胡麻はすり鉢で皮をむいて、胡麻豆腐にする。筍を炊いて木の芽をたっぷり盛って仕上げる。原案エッセイの中に登場する豪快にして繊細な料理を、目にも耳にもおいしく再現したのは、家庭料理の第一人者として知られる料理研究家の土井善晴。本作で初めて映画の料理を手掛けた土井は、食材選びや扱い方、手さばきの指導や器選びに至るまで、深く作品に携わった。

 

 

 

 

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毎日の家事をひとつひとつ丁寧にこなす性格でありながら、13年前に亡くなった妻の遺骨の処遇を今でも決められないでいる主人公ツトムを、独特の色気を漂わせて演じる沢田研二。

 

彼を支える共演陣にはも豪華な顔ぶれが揃った。ツトムの山荘を時折訪ねてくる担当編集者で、年のは慣れた恋人でもある真知子に、『ラストレター』の松たか子。ツトムの手料理を、口いっぱいに頬張る食べっぷりが愛らしい。さらに、ツトムの義母に奈良岡朋子、山歩きの師匠の大工に火野正平、恩人の住職の娘に檀ふみと、味のあるベテランが脇を固めている。そして、地元長野の人々が中江監督のワークショップを経て多数出演している。

 

 

 

 

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タイトルの「土を喰らう」とは、筍を喰らうこと。四季の移ろいの中で、自然が恵んでくれる食物をありがたく頂くことだ。その食に向き合う精神は、今この瞬間を大切に生きることを意味している。楽しくも厳しい里山の暮らしから、そんな人生の極意を学んでいくツトムの物語は、日々の生活に追われ、瞬を感じることが難しくなってしまった私たちに、人として豊かな生き方を体感させてくれる。

 

 

 

 

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◉物語◉

 

 

 

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作家のツトム(沢田研二)は、人里離れた信州の山荘で、犬のさんしょと13年前に亡くなった妻の八重子の遺骨と共に暮らしている。口減らしのため禅寺に奉公に出され、9歳から精進料理を身につけた彼にとって、畑で育てた野菜や山で収穫する山菜などを使って作る料理は日々の楽しみのひとつだ。とりわけ、担当編集者で恋人の真知子(松たか子)が東京から訪ねてくるときは、楽しさが一段と増す。川を少し残して囲炉裏であぶった子芋を「あちち」と頬張る真知子。「おいしい。川のところがいいわ」と喜ぶ姿に、ツトムは嬉しそうだ。

 

 

 

 

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山荘から少し離れたところに、八重子の母チエ(奈良岡朋子)が畑を耕しながらひとりで暮らし暮らしている。時折、様子を見に来るツトムを、チエは山盛りの白飯、たくあんとみそ汁でもてなした。八重子の墓をまだ作っていないことを、今日もチエにたしなめられた。帰りには自家製の味噌を樽ごとと、八重子の月命日に供えるぼた餅を持たされた。

 

 

 

 

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塩漬けした梅を天日干しにする季節、ツトムの山荘に文子(檀ふみ)が訪ねてくる。彼女は、ツトムが世話になった禅寺の住職の娘。住職に習った梅素ジュースを飲みながらの昔話。文子は、亡き母が60年前に住職と一緒に付けた梅干しを持参していた。「母は、もしツトムさんに会うたびにお裾分けしてあげなさい、と言うて死にました」と文子。夜、ひとりになったツトムは、作った人が亡くなった後も生き続けている梅干しの味に泣いた。

 

 

 

 

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チエが亡くなった。義弟夫婦(尾美としのり、西田尚美)に頼まれて山荘で葬式を出すことになったツトムは、大工(火野正平)に棺桶と祭壇を頼み、写真屋(瀧川鯉八)に遺影を頼みと、通夜の仕度に大忙しだ。東京から真知子もやって来て、通夜振る舞いの支度を手伝うことに。夜、思いがけないたくさん集まった弔問客は、チエに作り方を習ったそれぞれの味噌を祭壇に供えた。

 

葬儀のあと、真知子を栗の渋皮煮でねぎらったツトムは、「ここに住まないか」と持ちかける。「ちょっと考えさせて」と応じた真知子だが、しばらくして、ふたりの心境に変化を生じさせる出来事が起こるーー。

 

 

 

 

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◉豆知識◉

 

 

 

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旧暦を使っていた頃、季節の目安とされていた節目。一年を24に分けて、それぞれの長さは約15日間。原案では月ごとの章で進むが、脚本にするときに中江監督がより季節の変化を感じる二十四節気に変更している。

 

 

 

 

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仏堂の修行にはいったものは、美食、肉食を避け、素食、菜食を心がける。ツトムは9歳で京都の禅寺に奉公に出される。13歳で脱走するまで、和尚から精進料理を習った。その時代に身につけたことを、68歳になった今も心がけ、一つひとつの野菜を丁寧に余すところなく料理する。ツトムの日々の食事は質素に見えるが、自然の恵そのものを食す、とても豊かなものである。

 

 

 

 

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禅道の大本山、永平寺の開祖である道元和尚が著した心得書。典座とは禅道において食を司る重責を担う役職。その典座が行うべきことをことや心構えを細かくまとめたのが、典座教訓である。本作の中でもその一節が引用されている。

 

 

 

 

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1118〜1190年。鳥羽天皇仕えた武士として知られるが、23歳で出家。優れた歌人として広く知られていて、百人一首の一句も詠んでいる。本作の中では有名な一句を引用している。「願わくは 花の下にて 春死なむ そのきさらぎの 望月のころ(願うなら、2月15日(旧暦)の満月の頃、満開の桜の下で死にたい)」という意味。お釈迦様の亡くなったのと同じ日、桜の満開の頃に死にたいと願った西行法師は、その一日後に亡くなった。

 

 

 

 

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いろはにほへと ちりぬるを(色は匂へど 散りぬるを)

 

わかよたれそ つまならむ(我が世誰ぞ 常ならむ)

 

ういのおくやま けふこえて(有為の奥山 今日越えて)

 

あさきゆめみし えひもせす(浅き夢見じ 酔ひもせず)

 

 

本作の中でツトムが歌う「いろは歌」は、仮名を重複せずに作られた47字の誦文(ずもん)。仮名を書く練習をするための手本として伝わったもの。七五調。通常、節はないが、ツトムは「京の通り名 数え歌」の節で口ずさむ。京都育ちのツトムならでは。

 

 

 

 

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ツトムの飼っている犬・さんしょ役は、白馬村の近隣のお宅の飼い犬・もも。雑種、メス。ちょっと太め。撮影前にスタッフが周辺で犬を探しまわっていたところ、スタッフが運転する軽トラックの後ろを犬がついてきた。その出会いが、出演へとつながった。新井プロデューサーがしつけ担当となり、家までの送り迎えなど時間を共にしながら、撮影に挑んだ。沢田研二には初対面で頭をなでてもらい、すんなりとなついた。ツトムを待ちわびる姿など、名演をみせている。名前は山椒好きのツトムの妻・八重子がつけた。

 

 

 

 

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監督・脚本/中江裕司

 

出演/沢田研二、松たか子、西田尚美、尾美としのり、瀧川鯉八、檀ふみ、火野正平、奈良岡朋子 他

 

 

 

 

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