No.398 サンシティ名画劇場「彼らが本気で編むときは、」

No.398 サンシティ名画劇場「彼らが本気で編むときは、」

優しさに満ちたトランスジェンダーレスの女性と、彼女の心の美しさに惹かれ、全てを受け入れる恋人。2人の前に現れた愛を知らない孤独な少女。現代のさまざまな家族の形を物語に編み込みながら、それぞれの幸せを見つけるまでの心温まる60日の極上エンターテイメント。

日 時

2018年1月26日(金) ・ 27日(土)
 10:00/14:00/18:30

本編時間

2時間7分

会 場

小ホール

出 演

料 金

1,000円
割引券持参800円

公式サイトURL http://kareamu.com

公益財団法人越谷市施設管理公社


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『かもめ食堂』『めがね』などで、日本映画の新しいジャンルを築いてきた荻上直子監督の5年振りの最新作『彼らが本気で編むときは、』は、編み物をモチーフに、今日本で急速に関心が高まりつつあるセクシャル・マイノリティ(LGBT)の女性リンコを主人公としていち早く物語に取り込んだ。監督自身「この映画は、私の人生においても、映画監督としても、“荻上直子・第二章”の始まりです」と公言する、新しいステージに踏み出した作品である。
 
 
 
脚本は、荻上監督のオリジナル。きっかけは、双子の母となった監督が家族で過ごしたアメリカでの生活にあった。20代の6年間を過ごしたアメリカへ12年振りに渡った。当然のごとく、監督の周囲にはセクシャル・マイノリティの人たちが存在していた。その後帰国した日本で、身の回りのセクシャル・マイノリティ率が減ったことに違和感を覚え、さらに「性は男と女だけじゃない」という新聞記事を目にしたことが、監督を新たな映画作りへと向かわせた。
 
 
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まだ戸籍は男性ながら女性の体を手に入れた、本作のヒロインであるリンコには生田斗真。『人間失格』『脳男』『土竜の唄 潜入捜査官 REIJI』など、さまざまなキャラクターに果敢に挑んできた生田は、男性性を強く感じさせる俳優といっていい。「他には考えられない」との監督たっての希望でキャスティングが実現したが、これまでを遥かに超える挑戦になった。強い意思を持ってあらゆる困難に立ち向かったからこそ得た真の優しさと思いやりを持ったリンコを、繊細に体現している。
 
 
リンコの恋人マキオには、人気実力ともにうなぎ上りの桐谷健太。トランスジェンダーの恋人をもつ難しい役どころだが、悩みながらもリンコの人間性を見抜き、全てを理解し受け入れる、懐の深い男性を演じきった。生田も桐谷も、本作を「自分たちのターニングポイントになる」と口を揃える。
 
 
さらに本作は、小さな少女が牽引している。母親に家出され、リンコとマキオのもとへとやってくるマキオの姪っ子トモだ。この重要なキャラクターに、オーディションを経て抜擢されたのが、本作で映画本格デビューとなる柿原りんか。難役を感情豊かに表現し、観る者の涙を誘う。
 
 
また、同性である男の子に恋心を抱き悩む、トモの同級生カイに扮するカイに扮する込江海翔も、新鮮な印象を残す。
 
 
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共演陣も豪華だ。トモを置いて男のもとへとは知る母ヒロミ役で新たな顔を見せるミムラ。リンコに強い偏見を持つ、カイの厳格な母ナオミ役に小池栄子。マキオとヒロミの認知症を患う母サユリ役にりりィ。老人ホームで働くリンコの同僚の佑香役に門脇麦。心と体の違和感に悩むリンコの良き理解者として、傍らでずっと支え続ける母フミコ役に田中美佐子。申し分のない顔ぶれが集結した。
 
 
また、荻上作品に欠かせないスタッフの一人であるフードスタイリスト飯島奈美が本作にも参加。「家族」が重要なキーワードのひとつである本作の中で、食卓を彩るリンコの数々の美味しい手料理は、トモの心を温め、母は決して与えてくれなかった家庭の温もりや安らぎを感じる団らんのひとときを与えている。
 
 
人生のパートナーの域にまで辿り着く、リンコとマキオの深い恋愛。性に悩むリンコのためにニセ乳を作る母フミコの母性愛。サユリ、ヒロミ、トモの3世代に渡り、上手に親子関係が築けず悩みながらも、子守唄が繋ぐ微かな親子愛。息子を愛するがゆえにすれ違うナオミとカイ。現代のさまざまな家族のカタチを物語に編み込みながら、優しい眼差しで、自分と異なる人を認め、多様な生き方や価値観を尊重する、平和な社会になってほしいという、荻上監督の熱い願いが込められた極上のエンターテイメントである。
 
(※トランスジェンダーとは、一般的に性自認が身体的性別と対応しない状態や人を指すが、その概念を言い切ることは困難である。)
 
 
 
 
STORY
 
 
 
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小学5年生のトモ(柿原りんか)は、荒れ放題の部屋で母ヒロミ(ミムラ)と二人暮らし。ある日、ヒロミが男を追って姿を消す。ひとりきりになったトモは、叔父であるマキオ(桐谷健太)の家に向かう。母の家では初めてではない。ただ以前と違うのは、マキオはリンコ(生田斗真)という美しい恋人と一緒に暮していた。それはトモが初めて出会う、トランスジェンダーの女性だった。
 
 
 
 
 
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キレイに整頓された部屋でトモを優しく迎え入れるリンコ。食卓を彩るリンコの美味しい手料理に、安らぎを感じる団らんのひととき。母は決して与えてくれなかった家庭の温もりや、母よりも自分に愛情を注いでくれるリンコに、戸惑いながらも信頼を寄せていくトモ。その姿にリンコも愛おしさを覚え始める。
 
 
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リンコとマキオの出会いは、リンコが介護士として働く老人ホーム。マキオの母であり、トモの祖母でもある認知症のサユリ(りりィ)が入居している。献身的に自分の母を介護するリンコに、マキオが一目惚れしたのである。
 
 
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悔しいことがあるたび、編み物をして心を落ち着かせてきたリンコ。そして今は、とある目標に向かい、“煩悩”を編み続けている。やがて“煩悩”作りには、マキオとトモも参加するようになる。
 
 
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リンコの職場の同僚、佑香(門脇麦)の結婚式。佑香の幸せそうな笑顔に、少なからず刺激を受けるリンコ。トモの母になりたい感情が日に日に膨らんでいく・・・。そんなリンコの思いをマキオは受け入れるのだった。
 
 
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本当の家族ではないけれど、3人で過ごす特別な日々は、人生のかけがえないもの、本当の幸せとは何かを教えてくれる至福の時間になっていく。このまま永遠に続くように思えた3人の関係だが、突然、ヒロミが帰ってくる—
 
 
 
 
 
監督・脚本/荻上直子
 
出演/生田斗真、桐谷健太、柿原りんか、ミムラ、小池栄子、門脇麦、柏原収史、込江海翔、りりィ、田中美佐子 他
 
 
 
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